5年後の、東京バレエ団「M」鑑賞記

「暑さ寒さも彼岸まで」
この言葉のとおり、あれだけ暑かったのに朝晩の気温が下がって過ごしやすいですね。

先日の秋分の日、東京バレエ団公演の「M」を再び観てきました。
リンク記事は5年前の記事。「2度目の!」方もあるのでぜひ。


「バレエはただバレエであればよい。
雲のやうに美しく、風のやうにさわやかであればよい。
人間の姿態の最上の美しい瞬間の羅列であればよい。
人間が神の姿に近づく証明であればよい」

過去記事からの引用。綺麗で美しいものなのだから、ただ、そうであってくれたらいい。

ベジャールはフランス語の4つの「M」・・・海(mer)、変容(métamorphose)、神話(mythologie)、死(mort)の頭文字と共に、三島由紀夫の頭文字『M』を模して創ったそうです。

”モーリス・ベジャールと三島由紀夫の、お互いの美意識の取っ組み合い”と形容していた人がいたけど、
本当に美しい舞台。どこをどう見ても「美」しかない。
無駄がなく、そして静寂や間合いといった余白が沢山あって、見ている側もその余白を「待つ」勇気が要る。

三島由紀夫という存在や人物、見方によっては暑苦しいし、変人の域だし、右翼的(とも言える)し。
だけど今回もやはり涙が出てきたのと、終演後に階下を見ると、一階席は総立ちのスタンディングオベーション。
余りにも多角的な人物を、無駄をそぎ落として描き切ることができるベジャールさんはやはり凄いと思うし、決して美化していると感じなかったのです。

少年:岩崎巧見
イチ:柄本 弾
ニ:宮川新大
サン:生方隆之助
 シ:池本祥真
聖セバスチャン:大塚 卓
 女:伝田陽美
海上の月:長谷川琴音
射手:南江祐生
船乗り:安村圭太
他 東京バレエ団

ピアニスト:菊池洋子

この作品は、登場人物全員が「三島由紀夫」の側面を演じているんですよね。
心の中だったり、理想像だったり、愛(エロス)の対象だったり
象徴的なのはやはり”シ(死)”、なんだけど。
特定の誰かを褒められないぐらい、皆さん素晴らしかったです。



もし三島さんが今の日本を見たら、どう思うんだろうか。悲しむか、怒るか、幻滅するか。
(そしてまた切腹するかもしれんけど・・)
もしくは彼なりの美学で、もっと違った言葉を沢山書いていたかもしれない。

今年は生誕100年なのですよね。



31年前には余り受け入れられなかったとされるこの作品が、時間を経て観られるようになったのはなぜなのか。
ベジャールさんが時代を先取りしていたのか、それとも私たちが無意識に求めているのか、それは分からないけれど。



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二度目の!東京バレエ団「M」鑑賞

こんにちは
バレエ教師兼ダンサーの河合かや野です。

三連休に入りましたね。
昨日は午前中にオンラインレッスンをした後
神奈川県民ホールへ東京バレエ団の「M」を観に行きました。


「M」は先月の10/24(土)に、上野東京文化会館で初見。
→ 東京バレエ団公演「M」鑑賞。
余りにインパクトを受けてしまい、鑑賞後に代表作を読みはじめたりも。
文化の日に『鹿鳴館』を読む

こういったプロセスを経て「やっぱり行っておきたい」と思うに至り、チケットを取りました。


三島由紀夫は、バレエについてこんな言葉を遺しているそうです。

「バレエはただバレエであればよい。雲のやうに美しく、風のやうにさわやかであればよい。人間の姿態の最上の美しい瞬間の羅列であればよい。人間が神の姿に近づく証明であればよい」

https://nbs.or.jp/webmagazine/


2度目は心に少し余裕ができたせいもあり、この言葉とベジャールさんの哲学的な考え、そして
抽象化した動きが今回の作品の大元なのかなぁと。

この作品は一か所だけを追い求めてみていると、他で何か起こってるかが分からなくなる不思議さがあって、そのため割と全体が見渡せる遠めの場所を選んだのだけど、やっぱり今回もマジックにかかりそうでした・・(^^;

ダンサーの方達、前回よりもこなれてきたというか、より力強くそして優美に感じました。
女性群舞の”海”、あの踊り、個人的にとても好みです。瞑想のようなポーズから始まり、見ていて穏やかな気持ちになる。
男性群舞は、かつて踊ったことのある方にお伺いした時「とにかく男のパートはキツイんですよ!」と仰っていたけど本当にその通り。その分迫力がどんどん増して行ってて、全体の精神性も高くなってきてるのが伝わってきました。
群舞が良いのですから、ソリストや芯になる人達も更に上がっていて、シ=死の池本祥真さんは更に変化(進化)されていて、静セバスチャンの樋口祐輝さんと共に目が釘付けになりました。

女性として象徴的だったのが”月”の金子仁美さんと、”女”の上野水香さん。
光の放ち方が対照的だけど、三島由紀夫が求めた女性像だったのかもしれない。
優美でそして強く、だけど儚い。
そこへ音楽:サティやワーグナー、ドビュッシーや能のリズムが入り交ざり、そして静寂が多い”間合い”が、緊張感を保ちながらストーリーをどんどん引っ張っていく。


この作品は、一人の一生を描いてるものだけど、輪廻転生がテーマじゃないかな。
それは冒頭の部分がまた最後にもなり、営みって続いていくものなのだなぁ、と言う気持ちになったから。
クライマックスの自決シーンでは、やはり泣けて来たけれど。


二度見ることで、膨大な情報量が少し自分の中で整理できました。
そしてやはり良いものを見た後は心の中がそれでいっぱいになって、これからのことを落ち着いて考えたりも。良いものを見た後って、新しい視点が生まれますよね。


舞台、色々見てみましょうね。
理解しようとして見るのではなく、スペシャル的に秀でた人たちが創り上げたものを見て、ただ感じる。
そこにはきっと、自分を豊かにしてくれるものがあるはずなので。




終演後の舞台より




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「M」が有料配信されるそうです

こんにちは
バレエ教師兼ダンサーの河合かや野です。

昨日Twitterで発見!
なんと!と思わずリツイートいたしました。


先月「M」を観に行った際のブログ記事はこちら
東京バレエ団公演「M」鑑賞。

今度11/21に神奈川県民ホールでも上演されますが
そちらのチケットも取りました。
もう一度観てこようと思って。
席は前回とは別アングル。どんな風に見えるんだろう。

前回は圧倒されて感情が揺さぶられたけど
今度はもう少し(落ち着いて)観れる気がします(#^^#)


同じ公演をもう一度観るなんて・・ちょっと大人の気分でもあります(笑)
でも、良いと思ったら繰り返して観て良いんだもんね。


★前回の公演のでしょうか。動画もアップされてましたよ。
難しそうと考えるよりも
「気になる・・」と感じたらご覧になってみた方が良いと思いますよ(๑・̑◡・̑๑)



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東京バレエ団公演「M」鑑賞

こんにちは
バレエ教師兼ダンサーの河合かや野です。
一昨日に続き、昨日も舞台鑑賞する機会に恵まれました。

東京バレエ団公演「M」、振付はモーリス・ベジャール。実は私今回が初見。
最近なぜか、三島由紀夫に興味が出てきてるところです。
その昔「潮騒」しか読んだことが無かったのに。

先月富士山麓になる「三島由紀夫文学館」に行きました。その時の記事がこちら
そこには、少年時代の三島由紀夫の写真がありまして(確か14歳)
利発そうな澄んだ目の、そしてとても可愛いお顔。
順を追ってみていくと、目にどんどん鋭さが生まれ、そして口元が変わっていく。
こんなに可愛い少年が、どんな心の変化から、最後自決に至るまでになったのだろう
そしてふと「10月にはMやるんやー。観てみたい」と思ったのがきっかけです。

久しぶりの東京文化会館。




観る前に何か予習しとこか?とも思い、小林十市さんのブログを読みました。
小林十市 連載エッセイ「南仏の街で、僕はバレエのことを考えた。」【第10回】「M」について。

創作現場に立ち会っておられる十市さんの言葉は、状況をなんとなくでも想像させてくれる感があり
そして今回、シ(四=死)を演じられた池本さんが、小林十市さんの動きと被るように見えることが多々ありました。
冒頭は海のシーンから始まり、そこへ祖母と少年が現れる。
少年の動きを追いつつも、私の頭の中では14歳の頃の写真がものすごく重なり、それが最後まで続きました。自決前に三方が出てきたシーンから、もう涙が止まらなくて。


他の三島作品を読んでいない心もとなさから、きっとここがあの小説からの部分なのだろうか
あれがきっとそうなのだろうか、と言う推測の中で鑑賞してましたが
「豊饒の海」「金閣寺」「鹿鳴館」を読んでる方だと、もっとピン!と来るのかもしれない。
でも読んでなくても、十分に伝わるものはあったし、徐々にそれらが「イチ」「ニ」「サン」「シ」と言う順序で、最後の「シ=死」に繋がっていく。


私がもし、これを演じる側だったら?と考えた時、多分頭の中の整理から始めたと思います。
過去に創作するためのWSに参加した時も「対象になる人物の資料を、できるだけ集めて読んで欲しい」と言われたことがあったので。
どれだけ動きが良くても、まず知識が伴っていないと見えてこない部分ってあると思うのです。
きっとベジャールさんや他の振付家もだけど、特に「抽象的なものを得意とする人」の作品を踊れるには理解力と想像力が無いと、一緒にお仕事できないと思うのね。

再演で、しかも今ほとんどのメンバーが今入れ替わっている東京バレエ団が、この作品を上演されたのは
素晴らしいと思いました。肉体的にも(特に男性)キッツイだろうなぁ・・(1時間40分休憩なし)


とっても美しい作品です。日本が本来持っている”和の要素”と、”究極に美しいもの”を求めた三島由紀夫の世界観が出ていて、音楽(黛敏郎)や美術が踊りと相まって、何とも言えない不思議な気持ちにさせてくれます。
エリック・サティのジムノペディや、シャンソンの「待ちましょう」とか、はたまたお経を詠む声とか
混然一体となっているけれど、全く違和感が無い。

カーテンコールが中々終わらないぐらいの拍手でした。ブラボー禁止なのに、言ってる方も(^^;
これまで余り興味ない、なんて思ってて勿体なかった。ベジャールさんが生きて居られた頃に見ておきたかったです。



★今回おけぴのチケット救済から購入しましたが、お譲りくださった方がプログラムの引換券までつけてくださり、とても嬉しかったです。
あともう一回、見ようと思えば見るチャンスがある(今日はクラス指導があるから無理だけど)
あとは11/21(土)に神奈川県民ホールで上演されるようですよ。




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